デジタルの中でのアナログ回帰 (2-2)


2-2a バックラッシが、歯車の連鎖構造の中で、各歯車の回転量にいかなる影響を及ぼすのかを考察する。このa図における各歯車、@,A,B,Cは、まったく同一のものであり、現在停止状態にある。これより動力としての、@を駆動させることになる。この図においてのバックラッシはあくまでも連鎖状態を明解にするためのものであり、数値的な面は割愛したい。連動が開始すると赤い矢印の方向へ各々回転するものとする。各歯車に配置したマークの直上にある逆三角形の印は、空間に固定されているものであり、機構に影響を及ぼすものではないが、歯車の回転開始後のマーク先端の針の振れの変化を知る目安としてご理解いただきたい。

2-2b 動力である@が駆動を開始し、@の歯がAの歯に到達することによって、Aが連動を開始する。さらにAの歯がBの歯に到達することによって、Bが連動を開始する。そしてBの歯がCの歯に到達した時点で、動力である@を停止させたとする。このb図はその状態である。バックラッシが無く、@の駆動開始と同時に全ての歯車が連動状態にあったならば、各々の歯車の回転の方向は違えども、回転量は@,A,B,C同一のはずであるが、この図においては@→A→B→Cの順で針の振れは狭まっていることから、回転量に明らかな差が発生してることが認識できる。

2-2c b図の状態から@の駆動を再開してみることにする。Cも連動を始め、機構全体が連鎖する状態となる。そして@がちょうど1回転を終えた時点で、@を停止させたものがこのc図である。@が1回転を終えたにもかかわらず、A,B,Cのいずれもが1回転を終えていない。針の位置は、@から離れるほど遅れていることが認識できる。

 ここでおこなったことは所詮シミュレーションにすぎないが、「訪れない明日のために」においても、似かよった現象の発生が予想される。すなわち(00)が23兆9592億41414863.8年間、1400回転/分(0.04秒で1回転)の速さで回転を続けることができたとしても、(37)は1回転しきれていないのではないかということである。カウンター・ギアを含めた各歯車間に1回転中の0.1%のバックラッシがあり、(00)が23兆9592億41414863.8年間、1400回転/分(0.04秒で1回転)の速さで回転を続けたと仮定し、(37)の1回転中の回転量の到達度を計算してみることにした。

 「訪れない明日のために」では、大小合わせて111個の歯車が使用されている。この内バックラッシが発生している歯と歯が噛みあうのは、73箇所である。この73箇所毎に1回転中の0.1%である0.36度のズレが発生していると考えられる。単純に計算すれば、73×0.36=26.28 すなわち(00)が前述どおり1400回転/分(0.04秒で1回転)の速さで、23兆9592億41414863.8年間、回転を続けたとしても(37)は1回転を終えるまで、なお26.28度も残していることになってしまうのである。この問題を完全に解決するためには、機構全体にわたってバックラッシを完全に排除しなければならず、現実世界においての実現は難しいのではないかと思われる。この考察から得られた答は「訪れない明日のために」における各歯車間のバックラッシが、それぞれの組の4:1の計算から割りだされる回転量を正確に導きだすための障害となっているということなのである。

Composed by Taicho @rt factory