デジタルの中でのアナログ回帰 (2-1)

                     第二章


2-1 歯車の結節点とバックラッシ

 「訪れない明日のために」が、広範な生物間の時間感覚差、個体内での時間感覚のゆらぎについて、対比、考察するための装置として効果を発揮するためには、恒常的な作動を要求される。しかし装置は現実世界における物質の風化作用からは逃れられない。動力の電気モーターは、この作品のコンセプトが要求している長期間の連続運用に耐えられるものではない。また高速度回転する歯車ほど損傷率は高くなる。この中の歯車の歯一片の欠損が、機構全体の活動を阻害してしまう。装置においての時間が停止することを意味する。
 「RIUE-S」という歯車の連鎖連動構造体を恒常的に作動させていくために、現実世界での機械的作動における問題点を深く探求していくべきであると感じた。ここで4:1のギア比をよりどころにした計算尺としての機能の正確性に、大きな欠陥があることに気づいた。バックラッシの問題である。
 2-1で示されるバックラッシは、AとBが比較的高速で回転しているような組同士において、双方の連鎖連動にほぼ障は発生しないと考えられるが、ごく低速で回転する組(数十年以上の単位で周回する組など)同士では、重大な問題が発生すると予想される。
 「訪れない明日のために」においては、全ての歯車が連鎖連動しているように見えていたとしても、機構全体として見た場合、まだ連鎖連動は始まっていない部分がある。各組歯車間のバックラッシは、連鎖連動する歯車の回転に重大な影響を及ぼすと考えた。
 「訪れない明日のために」におけるバックラッシが、各歯車間に0.1%あると仮定した場合、各組歯車を同一方向に回転させるために設けたカウンター・ギアを考慮に入れて、各組歯車が機構の作動開始からどれほどの時間を経たのち、回転を始めるのかを考えてみた。まずはバックラッシという誤差を解消し、(00)の歯が(01)組の歯に到達するまでの時間を求めなければならない。(機構設計上の都合で(00)から(01)組間はカウンター・ギアを設けてはいない)(00)の1回転に要する時間は、0.04秒である。1回転を100%とすると、0.1パーセントとは1回転の1/1000ということになる。
 0.04÷1000=0.00004 すなわち(00)が駆動を始めて、0.00004秒後に(00)の歯が(01)組の歯に到達するということである。このとき、(01)組が連鎖連動を開始する。

 2-1で示されるバックラッシは、AとBが比較的高速で回転しているような組同士において、双方の連鎖連動にほぼ障は発生しないと考えられるが、ごく低速で回転する組(数十年以上の単位で周回する組など)同士では、重大な問題が発生すると予想される。
 「訪れない明日のために」においては、全ての歯車が連鎖連動しているように見えていたとしても、機構全体として見た場合、まだ連鎖連動は始まっていない部分がある。各組歯車間のバックラッシは、連鎖連動する歯車の回転に重大な影響を及ぼすと考えた。
 「訪れない明日のために」におけるバックラッシが、各歯車間に0.1%あると仮定した場合、各組歯車を同一方向に回転させるために設けたカウンター・ギアを考慮に入れて、各組歯車が機構の作動開始からどれほどの時間を経たのち、回転を始めるのかを考えてみた。まずはバックラッシという誤差を解消し、(00)の歯が(01)組の歯に到達するまでの時間を求めなければならない。(機構設計上の都合で(00)から(01)組間はカウンター・ギアを設けてはいない)(00)の1回転に要する時間は、0.04秒である。1回転を100%とすると、0.1パーセントとは1回転の1/1000ということになる。
 0.04÷1000=0.00004 すなわち(00)が駆動を始めて、0.00004秒後に(00)の歯が(01)組の歯に到達するということである。このとき、(01)組が連鎖連動を開始する。
 次の(01)'(カウンター・ギアであるので「組」は付加しない)に移る。(01)組の1回転に要する時間は0.16秒である。(01)組が連鎖連動を開始してから、(01)組の歯が(01)'の歯に到達するまでの時間は、0.16÷1000=0.00016となる。この0.00016秒に、(01)組の連鎖連動開始までの時間0.00004秒を加える。0.00016+0.00004=0.0002 すなわち(00)の駆動開始後、0.0002秒後(01)'は連鎖連動を開始する。
 さらに次の組に移る。(01)組と(01)'の1回転に要する時間は同一の0.16秒であるから、(01)'が連鎖連動を開始してから、(01)'の歯が(02)組の歯に到達するまでの時間は、0.16÷1000=0.00016となる。この0.00016秒に(01)'の連動開始までの時間0.0002秒を加える。0.00016+0.0002=0.00036 すなわち(00)の駆動開始0.00036秒後に(02)は連鎖連動を開始するのである。
 私は各組歯車が玉突き的連鎖連動によって関係を成立
させていると考えている。(00)が駆動を開始してのち、159億7282万7609.91年経過するまで、(37)(「訪れない明日のために」では、最後の歯車であるので同軸に小歯車は無い。よって「組」は付加しない)は完全に停止した状態ということになる。もっとも、私がここで提示した1回転中0.1%のバックラッシは、あくまでも仮定にすぎないことを留意されたい。
 1回転中の0.1%というバックラッシにも、実際には気候や機構自体の作動にともなう発熱によって、歯車、支持体の膨張、または収縮などにより、誤差が生じることが考えられる。解決策としてあげられるのが、2-1中の動力A歯車に対しての受動側B歯車を矢印とは逆方向に若干ながら負荷をかけることである。この逆方向への負荷を最も必要とするのは、ごく低速で回転するはずの組である。さらにこれら低速度回転をするはずの組は、ロー・ギア効果により、莫大なエネルギーを蓄積しており、この逆方向への負荷が、動力源などに対する影響はほとんど考慮する必要は無いはずと考えたのであるが、今後の課題にすぎない。
 もう一度「訪れない明日のために」において、前述の1回転中の0.1%のバックラッシをカウンター・ギアを含めた全ての歯車間に未来永劫適用したと仮定したとする。これは熱膨張などによる誤差を無視し、各歯車が連鎖連動を開始するまで、いかなる場合においても動かないとも仮定してのことである。
 1回転中0.1%のバックラッシとは、回転角度に換算すると、360÷1000=0.36 0.36度となる。はたして、このバックラッシの問題は(00)の駆動開始から159億7282万7609.91年後に解決するのであろうか。各歯車における連鎖連動開始までの時間的ズレはあったとしても、(00)が23兆9592億41414863.8年間、1400回転/分(0.04秒で1回転)の速さで回転を続けるとすれば(37)は、そのとき1回転を終了しているのであろうか。図をもって考察してみた。

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